2014年12月10日水曜日

急いては事を仕損じる



私の勘違いで、7日朝のモガディシュ到着から本日まで国連軍の施設内に入ることができず、空港近くにあるジャジーラホテルに宿泊していたため、万が一の事を考えて(最近は色々な勢力もネットをフル活用しているので)、ツイートを控えていました。

私が犯したミスは、ウガンダを出国する際「国連から正式に許可をもらった」と思い込んだことでした。
原因は私の確認不足。
やはり焦るとろくな事がありません……。

6日夜。モガディシュ行きの飛行機に乗るため空港に移動中だった私は、国連からの受け入れ許可に関して車内で担当の方とやりとりしていました。そして最後に担当の方届いたメールの文面と添付書類(許可証)を見て、「宛先はサインをする責任者。文面から察するに双方の間で話がついてそう。ということは『予定通り明日来て良い』という事を知らせるため私にもCCが入っているんだ」と思い込み、「ふぅ、ミッションクリア」と胸をなでおろして機上の人となりました。
しかしそれが大きな間違いで、実際は私に進捗を知らせるため担当の方がBCCで送ってくれたメールで「後はサインさえもらえればOKまで来ているよ」という意味だったのです。

それが大きな間違いでした……。
「さあ、やっと仕事ができる!お迎えはどこ?」と、ウキウキした気分でモガディシュに到着し、降り注ぐ真っ白な太陽に目を細めながらタラップの上からそれらしい人を探しました。
が、いつもはウガンダ軍の担当者が迎えにきてくれているのに、今回は軍服の人が誰もいません。
「多分、到着が1時間半も遅れたから一度事務所に戻ってしまったんだろう」と推測し、仕方ないのでターミナルビルの外でしばらく待つことにしました。(従軍時は通常と入国方法が異なり一般の入国審査は通らないので)

しかし日陰にいるとはいえ、とにかく暑い。
体中から吹き出してきた汗に、海から吹き寄せる潮風がミックスされ全身がベタベタして気持ち悪い。
私は20分ほどで耐え切れなくなり、ウガンダ軍大尉に電話をしました。
すると、「あ~、着いちゃったんですね…。え~っと、うちは動けないんで国連の担当者に電話してもらっていいですか」とつれない返事。でも確かに今回はウガンダ軍ではなく国連からの許可を得た形になっているため、国連の担当者に連絡するのが筋です。

まあ昨日の今日だから、迎えまではまだ手が回わらなかったのかも。ただでさえ無理をきいてもらっているんだから贅沢をいってる場合じゃない。と、自戒しつつ国連の担当者に電話し、名を名乗り、昨日残業してまで協力してくれたことに感謝の言葉を述べつつ、無事に到着した事を報告しました。すると国連担当者から帰ってきたのは一言。「本当に来てしまったんだね。どうするのこれから?」という言葉。

「電話だし、音質悪いし、低く沈んだ声なので何いってるかわらないや。この状況下だと聞き返しても聞き取れないし」と考えた私は微妙な相槌をうちつつ「ところで、具体的にあと何分後に迎えに来てくれるの?」と問いかけました。

「……………。」長い沈黙の後、「で、これからどうするの?」
変わらず低い声でしたが、今度ははっきりと聞き取れてしまいました。

私はまったく事態が理解できず、しどろもどろになりながら質問し、そこでやっと「まだ許可は下りていない」という状況が飲み込めました。
とるなると、もうモガディシュに来てしまっている以上、町のホテルで待つしか選択肢がありません。

「あっ、やばい!!」そこでまた私は大きな問題に気づきました。
完全に国連の施設内に入るつもりだった私は、ソマリアの入国ビザを持っていません。
国連の許可を得ていない立場で入国する以上、通常の入国審査を受る必要があるのです。
「こうなれば強行突破して何が何でもビザをもらう。でも相手はソマリア人。大丈夫なのか……」と、悲壮な覚悟で15人ほどが待つ入国審査の列に並びつつ、同時に最悪空港内で野宿することも覚悟しました。

列が徐々に減っていき、やっと審査カウンターが見える位置まできたので、私が戦う相手はどんな顔をしているのか見るため首を伸ばすと――
「あれっ!? あれは……。間違いないブラックだ!!!」

初めてソマリアに来た2002年。宿泊したモガディシュのホテルで私が契約したボディーガードパックの通訳だったブラック。

滞在最終日前日に搭乗券を取りに行ってもらった際、「あっ、あしたの朝、ぜっ、絶対に持ってくるから」と、大きく目を泳がせながらお釣りの20ドルをちょろまかしたブラック。

3年前、ウガンダに帰国するための軍用機が急遽飛ばなくなり、民間機に乗るためのビザ切り替えで揉めていた時「なんだ、なんだ~!なんの揉め事だ」と祭り好きの親父のように楽しそうに現れ、10年ぶりに再会したブラック。

思わず私は大きく手を振っていました。

結局、また今回もブラックに助けられ、無事にビザももらえた上、滞在するホテルの予約と迎えの車の手配までしてもらいました。

宿泊していたホテルは、空港側にあるジャジーラホテル。なんどかテロの標的にもなっているのですが、その経験をいかして完全に要塞化されており、外国人とVIP御用達のモガディシュで一番安全なホテルです。しかし、なんと一泊200ドル(!!!) おまけに、夕食は20ドル…。

到着早々残金を数えながら泣きそうでした。でもこれも自業自得。今後の糧にしてやっと始まる取材に全力を注ぎたいと思います。

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